研究概要 |
本研究ではスピン偏極電子を利用したデバイスであるFe/Al_2O_3/FeCoサンドウィッチ膜を取り上げた。これは,Fe層とFeCo層の磁化の向きが揃っているときと逆向きのときでスピン偏極電子のトンネル確率の違いから上下の層間の抵抗Rに差が出てくるというものである。しかし,従来の実験では素子特性が不安定で,再現性も極めて悪かった。そこで本研究では,その再現性を改善することを目的に,サンドウィッチ構造膜の作製条件と素子特性の関係を調べ,以下の結果を得た。 最下層のFeCo層とAl層をマグネトロンスパッタ法で作製した後,Al層を酸化し,最上層のFe層を成膜した。このとき酸化方法,酸化時間,最上層のFe層の成膜方法を素子の変えて作製を行った。 1.Alの酸化を酸素中あるいは空気中の自然酸化で行った場合には,酸化が十分でなく,良好なトンネル接合は得られなかった。 2.Al層を酸素ガス中で逆スパッタリングによって酸化した場合には,良好なトンネル接合が得られる場合があった。 3.Al層の逆スパッタによる酸化プロセスは,逆スパッタの時間で制御することができ,良好なトンネル接合を得るためには,30分では不足であり,60分の酸化が必要であることがわかった。 4.最上層のFe層の成膜は,スパッタ法と蒸着法で行ったが,スパッタ法では良好な接合は得られなかった。これは,エネルギーの高いスパッタ粒子が酸化Al層を一部破壊しているためと考えられた。
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