研究概要 |
本研究では(1)スンクス胚の全胚培養法の確立と、それを応用した咽頭弓形成阻害技術の確立、および(2)咽頭弓形成期の細胞動態をRNAプローブで解明することを目的とした。 (1)の結果: スンクス胚の全胚培養を市販の全胚培養装置(池本理科、東京)を用いて、潅流ガス条件を変えて行った。結果は1-5体節期胚から始める場合、純ラット血清培地で、20%O_2・50ml/min(バランスはCO_2と5%N_2)から始め、開始日の24:00ころに60%O_2・25-30ml/min、その約12時間後に同ガス・50ml/min、さらに12時間後に同ガス・75ml/minの条件下で最も良好な結果が得られた。咽頭弓の形成異常はall-trans retinoic acid(RA)(Sigma,MO)およびFertilysin(N,N'-Octamethylene-bis-2,2-dichloroacetamide)(Sigma,MO)によって誘発することを試みた結果、RA作用下でのみ、濃度依存的・発生ステージ依存的な異常が認められた。4-6体節期胚を60ng/mlRA濃度培地で培養することにより、第1,2咽頭弓の形成不全や癒合を誘発することができた。また、4-6体節期胚の予定第1,2咽頭弓領域を、タングステン針で出血しない程度に破壊することによっても類似の形成不全が生じた。 (2)の結果: 二度に渡って作製したcDNAライブラリー(13日胚の全胚由来)の力価が低かったことから、HoxB遺伝子のオーソログは単離できなかった。神経堤細胞のマーカーとして現在、Smtwistのみを単離している。他種の関連遺伝子との比較により、Smtwistはtwistのオーソログであると考えられる。現在、新たなcDNAライブラリーを作製して、HoxB遺伝子群オーソログの単離を行っている。今後、単離されたプローブを使って正常胚と咽頭弓形成不全胚のこれら遺伝子の発現パターンを解析する。
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