研究概要 |
本研究の目的は,下顎骨区域切除後,骨欠損部に、rhBMP-2を用いて骨を誘導し,この部に歯科用インプラントを使用して咀嚼機能の回復をはかることである.このためには,rhBMP-2による骨誘導に適切な担体の検討が必要である.また,新生骨に置換されるまでの期間は担体の保持と骨欠損部の再建に必要な強度を有し,新生骨の形成後は吸収されるプレートが望ましい. 1.ラットにおける骨誘導 (1)rhBMPを含む担体,tricalcium phosphate(TCP)とフィブリン糊を皮下組織内に埋入し,骨誘導を確認した.フィブリン糊は,単独で使用するよりも他の担体の接着剤として使用すると利点が多い.TCPはX線不透過性で,X線写真による新生骨形成の確認に不都合であり,歯科用インプラントを植立するのに障害となる. (2)11週以内に新生骨を誘導するためには,少なくとも50μg/ml以上のrhBMP-2が必要と推測される. 2.犬を用いた下顎再建・担体保持用吸収性プレートの開発 非結晶性,分子量約26万,厚さ1mmの吸収性プレート(PLLA)を検討した. (1)下顎を1cm区域切除後,PLLAプレートとAOプレートで各側を再建した.再建直後の片持ち曲げ試験で両プレートを比較した結果,PLLAプレートは十分な固定力を有していると思われた. (2)区域切除前に,軟組織を剥離した下顎骨の印象採取を行った.これを基に石膏模型を作製しておき,PLLAプレートを加熱(70〜75℃)して石膏模型に圧接すると,下顎骨の形態が正確に再現され,トレー状のプレートが得られた. (3)下顎再建3カ月後にPLLAプレートを除去した.PLLAプレートには吸収部が散見され,3点曲げ試験による平均曲げ強度は未使用プレートの62%であった。 新生骨が3カ月以内に形成されれば,PLLAプレートは顎再建,担体保持の要件を満たすと考える.
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