研究概要 |
大腸菌のヘム合成の最終段階に働くフェロキレテ-スが欠失した大腸菌株(ΔvisA (=ΔhemH))は、プロトポルフィリルIXの蓄積により可視光感受性になるが、ΔvisAミュータント株から、光に非感受性のrevertantを分離して調べてみると、それらはほとんどが既知の遺伝子、hemAからhemGまでのミュータントであった。本研究では、1)新らたに分離したhemGミュータントを利用して、大腸菌のhemG遺伝子をクローン化、塩基配列を決定した[Nishimura et al. , DNA Res. , 2,1-8(1996)] 2)hemA-G以外のミュータントで、ヘム合成に関与するものを分離した。そのうちの一株(H103命名)はhemA遺伝子の近くにマップされた。塩基配列を決定し、226アミノ酸からなるORFを見いだし、この遺伝子をhemKと命名した[Nakayashiki et al. , GENE, 153, 67-70 (1995)]。 3)hemGのミュータントを暗所で培養し、青色光を短時間照射するとswimmingを行っていたバクテリアのほとんどがtumblingを始めることを観察した[Yang et al. , PNAS, 93, 2459-2463 (1996)]。 4)一連のポルフィリン合成に関与する大腸菌のミュータントは、他の高等生物のポルフィリン合成遺伝子のスクリーニングに有用であった。例えば、シロイヌナズナのhemGcDNAのクローニングを世界に先駆けて成功した[Narita et al. , Gene, 182, 169-175 (1996)]。 5)大腸菌においてはヘムによるフィードバック制御があること、stringent応答がヘム合成の制御に大きくかかわっていることを見いだした[Nakayashiki et al. , Mol. Gen. Genet. , 印刷中]。
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