研究概要 |
緑色光合成細菌の主要なアンテナ系はクロロソームと呼ばれる扁平な形をした構造体で、細胞質膜に接して存在する。この中では、色素が生理機能を発現するために色素の自己会合体を形成しており、タンパク質が機能発現に関与しないという、他のアンテナ系に比較して、際だった特徴を示す。しかし、この会合体形成の機構は多くの研究にもかかわらず、未だに明確にはなっていない。この点を明らかにする目的で以下のような研究を行った。 1.磁気円偏光二色性(MCD)による会合次数の解析 我々はMCD強度が色素の会合状態を反映することを見いだし(Kobayashi et al.,1996)、これを用いて会合次数を求めた。その結果、クロロソーム中では8量体よりも大きいことを確認した。 2.クロロソーム中での新しい成分の発見 クロロソームをヘキサノールで処理すると、可逆的にその光学特性が変化することが知られている。我々はこの過程を詳細に検討した結果、従来はまったく知られていなかった成分を発見した。これは非常に低い濃度のヘキサノールに感受性があり、その吸収特性から、クロロソームと細胞質膜内に存在するアンテナを結ぶ成分であることが確認された。この成分を考慮した色素系の新しいモデルを作成した(Mimuro et al.,1996)。 3.色素の自己会合体のモデル 従来から議論が多い自己会合体のモデルを新たに提出した(Mimuro et al.,1995)。根拠となる色素間の相互作用はラマン散乱のデータから求めた。このモデルは、従来のモデルを総て説明可能なもので、今後の指針となると考えられる。
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