研究概要 |
1)強光照射に伴う光化学系IIの機能的、構造的変化 FTIRで見たQ_Aセミキノンアニオン生成の阻害のタイムコースは酸素発生能の失活と良く一致しており、Q_Aの機能壊失が酸素発生能阻害の直接の原因であることが示された。D1蛋白質は光照射によりが選択的に損傷を受けた。 2)Q_B部位への光化学系II阻害剤結合が光損傷に与える影響 光合成阻害剤であるウレア・トリアジンとフェノール系阻害剤10数種について酸素発生能の失活、D1蛋白質の切断にあたえる影響を検討した。ウレア・トリアジン系阻害剤は酸素発生能の失活D1蛋白質の切断断片の生成を抑制した。一方、フェノール系阻害剤は失活を促進したが、D1蛋白質の切断断片の生成には影響を与えなかった。 3)光化学系II阻害剤結合により誘導されるD1蛋白質の選択的切断 フルオルグルシノール骨格を持つ1群の阻害剤によりD1蛋白質の切断が起こった。その中でPNO8(N-octyl-3-nitro-2,4,6-trihydroxy benzamide)について詳細な検討を行った。切断はQ_B部位に結合したPNO8により、D1蛋白質のdeループ中のロイシン258近傍1カ所で起こり、23、9kDa断片が生じる。切断は酸素の有無には影響されなかったが、低温条件やセリンタイプのプロテアーゼの阻害剤であるPMSFにより抑制された。以上の結果はPNO8の結合により引き起こされるQ_B部位近傍の構造変化が引き金となりD1蛋白質の切断が引き起こされることを強く示唆している。切断は完全暗黒下で進行するが、PNO8添加前に試料を短時間光照射すると著しい促進を受けた。前照射によりD1蛋白質に何らかの可逆的な標識付けが行われ、PNO8の結合は標識されたD1蛋白質のみに切断を誘導すると考えられた。
|