本研究では、共感経験尺度改訂版(EESR)の妥当性を検討するために、ロールシャッハ・テスト(ロ・テスト)との関連を検討した。これまでに蓄積したデータに加え、大学生230名に対し新たにEESRを施行し、統計的処理を行った後、共感性の類型化を行った。各類型(両向型、共有型、両貧型、不全型)から抽出された被験者(各10名)に対し、個別にロ・テストを施行し、データを収集した。得られたロ・テストデータを、クロッパー法にて記号化し、また、あわせてロ・テスト場面ならびに検査者-被験者関係を、心理治療場面における心理治療者の共感の観点から分析した。 EESRとロ・テストの関連については、数量的な記号化においては明らかな関連はみられなかった。これは、ESSRが意識的な統制の可能な質問紙法であるのに対し、ロ・テストは意識的統制のなされにくい投影法であるためといえる。しかし、即座に両者の関連が否定されたとはいえず、いわゆる記号化されたデータだけでなく、元々の素データからの検討が必要と考えられた。現在さらに精細な観点からの分析をしょうと試みている。また、ロ・テスト場面における検査者-被験者関係に焦点を当てた、より個性記述的な共感の観点からの分析については、研究論文としてまとめ、「心理臨床学研究」誌に投稿し、現在審査結果を待っている状況である。
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