研究概要 |
本研究の目的は、抽象名詞に的を絞り、英語の冠詞(名詞の加算性も含む)の選択に幅が出る具体例を提示し、その場合に意味・ニュアンスに違いがあるのか否か、そして違いがあるならどのような違いか、を実証的探ることにあった。 そのために、本研究では独自のアンケート(English Noun Usage Questionnaire)を、米国母国語話者のインフォーマント20名に実施した。アンケートでは、まず、与えられた文脈の中で問題の名詞が取りうる冠詞と加算性の組み合わせ5通り([0 N],[an N],[0 Ns],[the N],[the Ns])全てについて5段階評価で判断を求めた(0=Clearly non-native,1=Most likely non-native,2=Unsure,3=Clearly native[2nd preference],4=Clearly native[1st preference])。次に、その場合に冠詞と加算性の組み合わせによってどのような意味・ニュアンスの差が生じるのかについて記述回答を求めた。 インフォーマントの判断が平均値で3.0以上の項目を「可能な冠詞と加算性の組み合わせ」と操作定義し、判断データを分析した結果、12のテスト項目のうち8項目について2つ以上の組み合わせが可能であることが判明した。微妙な文脈の違いが冠詞と加算性の組み合わせの可能性に影響を与えるケース、文脈が全く同じでしかもFEELINGとHUNCHのように意味的に酷似していても、可能な組み合わせが異なるケース、などが具体的な形で明らかになった。さらに、テスト項目によっては判断データにかなりの個人差が存在することもわかった。 意味・ニュアンスの差については、記述データから、今後の研究で一般性が確認されれば学習者にとって有益と思われる冠詞のニュアンスの差がいくつか明らかになった。
|