筆者は、社会的に最適な廃棄物のリサイクリングを導くことを目的として、最近3年間科学研究費奨励研究(A)の補助を受けて研究を行ってきた。開始年度の1993年度は、基礎的研究として廃棄物関連統計を検討し、1994年度には、市場経済下でのリサイクリングのフローを定式化し、線形計画法によって古紙利用率55%を目指した『リサイクル55計画』の達成困難を予測した。 第三年度にあたる本年は、古紙を題材にしながら、マクロ経済的なリサイクリング条件からはなれ、リサイクリングの一方の主体である再生品を製造する環境保全型企業(古紙再生業)の経営計画・戦略や品質管理等について検討した。おもな理由は、リサイクリングが廃棄物という下流を始点とするend of pipe政策にとどまる限り、有効性には大きな限界があることが判明したからである。 そこで、本研究では、より上流の企業の事業内容や製品デザインからはじまり廃棄にいたるプロセスの総合的品質管理TQM、すなわち総合的環境品質管理TQEMの観点から、理論研究および古紙再生業について事例研究を行った。その結果、 1.今後進むであろう、国際標準化機構ISOの環境管理・監査等の標準ISO14000シリーズが品質管理の発想と手順に全面的に依拠していること 2.競争優位の源泉となるような高品質、短納期の経営方式と環境保全とを両立させるためには標準化を超えるような組織改革やTQEMの開発が必要なこと 3.事例企業においては、経営戦略として工場のクローズド化をすすめ、工程から廃棄物が排出されないように技術開発や設備投資を行う一方で、搬送や倉庫業務にも技術革新を体化した設備投資をおこなっているため(たとえばデジタル・ピッキング・システム)、いっそうの販売量および販売チャネルの増加が望まれていること 等を得た。なお、これらの知見は経営学または統計学関連の学会誌に発表する予定である。
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