研究概要 |
1)非平衡不可逆過程の場の理論の構築: 量子場の揺動・散逸を系統的に論ずるために,閉じた時間経路に関する有効作用の方法を一般化し,相転移を起こす不安定なポテンシャルがある場合に生成する揺動的作用・散逸的作用・パラメターの繰り込み作用を導いた.これを基にマクロな変数(集団座標)の発生を記述する方程式を導いた.(PTPに発表) また,場の理論における散逸性の起源に関して,不安定なLeeモデルを用いて解析した.(Phys.Rev.E.に投稿中) 2)初期宇宙の密度揺らぎの発生・電弱相転移・バリオン生成などへの応用: 宇宙初期における密度揺らぎの発生過程を,宇宙の再加熱と共に考えた.密度行列の時間発展を非平衡不可逆過程の場の理論に基づいて膨張する時空の上で考察した.最終的に得られる密度揺らぎのスペクトルや強度が散逸の存在によって大きく変わることを示した.(投稿準備中:上杉・窪谷・菅本さんらと共著) 次に,宇宙初期における電弱相転移の力学を議論する.特に,臨界温度直前で大きくなる揺らぎの効果で,臨界に達しない小さな泡が多数発生しバリオン生成に寄与する.これを見積もり,従来の小さな予言値がどれほど改善されるかを見た.(PTPに発表)更に,局所的な秩序パラメータを新しく定義して,そのダイナミックスが有効ポテンシャルによってどのように記述されるかを探った.(PTPに発表) 3)散逸があるときの量子トンネル効果への応用: 量子ポテンシャルの手法を用いて実時間のままでトンネリングの強さを計算する手法を開発した.そしてそれに散逸効果を摂動的に入れて,トンネル確率を引き下げる摩擦の効果・引き上げる拡散の効果・そしてパラメータの繰り込みから来る効果をそれぞれ独立に評価した.(投稿準備中)この理論形式は宇宙の“無"からの生成とそれに伴う粒子生成にも応用でき,現在発展させていっている.
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