米国カリフォルニア大学神経科学研究所のGray教授との共同実験を通じて、麻酔下ネコの外側膝状体における振動的細胞発火現象を解析した。視覚刺激提示下での外側膝状体における細胞活性を複数の金属微少電極で測定し、生データを本年度の予算で購入したアナログ-ディジタル変換ボード、および神経シグナル解析システムを用いて解析した。同時計測された神経細胞のスパイク活性の統計性をスパイク時系列の自己相関関数、パワースペクトラムなどを用いて解析し、特に視覚情報処理経路での上位部所である視覚皮質での細胞活性の性質と比較、検討した。この結果として、外側膝状体と視覚皮質の双方において視覚刺激依存性のある振動的細胞発火が存在することが示された。しかし、この二つの部所での振動的発火には明らかな統計的な差異が認められ、単純な関係づけは出来ないことが示された。また、異なる細胞でのスパイク発火間の時間的関係を相互相関関数を用いて解析した。この結果として、近接した細胞同士は高い確率で同期発火しているが、ある程度離れた細胞同士(500micron)においても同期発火を示す場合がわずかに存在することが判明した。これらの結果は、昨年の北米神経科学学会に引き続いてIBROの国際会議においても発表された。この研究に関連する論文を現在準備中である。 また、課題研究テーマであるダイナミカルアセンブリーという概念を物理、数学、情報科学などの広い分野の研究者に理解してもらう目的で、藤井、合原、塚田らとNeural Network誌にレビュー論文を投稿し、掲載予定である。
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