本研究は、次のような研究計画・方法に基づいて実施した。 1.断層系形状の現地測定:近畿・中部日本の主要活断層・構造線沿いの断層系形状の採取調査(重点調査地点20ヶ所、40日間)を行った。 2.断層パラメータ(破砕物の厚さ・断層の長さ・移動量・起震時マグニチュード)の調査見積り:各サイズの断層系を詳細に調査し断層パラメータ間の相関から起震時の応力降下値や活動の再来周囲を見積った。 3.断層系形状の3次元定量解析:表面粗さ測定器を用いて天然の断層系形状の定量的解析をおこなった。また、これらの断層系形状の特性をフラクタル幾何学の知識を用いて定量的に解析した。 4.岩石脆性破壊実験のデータとの比較解析と断層系形状に関する地質応力計の提出:物質の変形特性を扱うトライボロジーの知識を用いて、断層系形状に関する天然のフラクタル特性データと実験データを整理し解析した。この際、コンピュータを用いてデータを解析し、断層破砕物形成に関する摩耗の非線形構成則(岩石の摩耗特性の時間的変化)を決定し、断層系形状に関する地質応力計を確立した。 5.研究費で購入した帯磁率測定器を用いて断層系の変形度を見積もるとともに、そのフラクタル特性データとの比較を行った。 6.地殻の応力レベルの見積もりと現実的な脆性断層モデルの提出:断層系形状のフラクタル特性から断層の形成条件や形成(地殻の強度・不均一度・断層の成熟度・深さに伴う断層破砕帯の広がりなど)について言及し、さらに本研究で得られた地質応力計を用いて脆性領域における地殻の応力レベルの算出をおこない、研究計画2の結果をふまえて現実的な脆性的断層モデルを提出した。
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