本研究では、西南日本に分布する典型的な付加体である四万十帯について、レーザーを用いたAr/Ar法により変成鉱物1粒子を年代測定することを究極の目的とした。レーザー溶融によるAr/Ar法により年代測定を行うためには、多くの基礎実験が必要であった。とくに、原子炉において試料中の^<39>Kを^<39>Ar法に壊変させるための速中性子照射、また、レーザーによる鉱物溶融の特性を調べる(特に温度分布)などの基礎実験を重点的に行い、年代測定システムを完成させることを先ず第一の目的とした。とりわけ、原子炉での速中性子照射については、試料の調製、詰め込み、照射後の回収など、いろいろな技術的な問題点を克服する必要があった。これについては、京都大学原子炉実験所のご協力により、試料の分量にかかわらず同一の実験条件を適用できるようになった。具体的には、内径2ミリの高純度アルミ管に試料ごとに鉱物粒を封入し、さらにそれらを束ねて内径約10ミリのアルミ管に真空封入する。これをさらに数本、所定のアルミカプセルに入れて照射を行った。照射後は、原子炉実験所内のRIフード内において切断装置を遠隔捜査することにより、内径約10ミリのアルミ管を安全に開封し、各試料を入れた内径2ミリの高純度アルミ管のみを回収した。これを京都大学理工学部地質我学鉱物学教室のRI実験室に運搬することにより、容量と放射能レベルを小さくして、かつ、安全に試料の照射を行うことができるようになった。これらに加えて、既存のK-Arおよびフィッショントラックの両システムを用いた年代測定により、Ar/Ar法に必要な年代標準試料の比較・検討を行った。また従来行ってきた熟年代学研究に関しても、付加体の成長過程、さらには大陸縁辺での沈み込み帯における物質循環についてのモデル化を進めた。
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