本研究では、抵抗加熱方式による高温DACの開発と高エネルギー物理学研究所における放射光X線を使った層状含水鉱物の脱水反応のカイネティクスに及ぼす圧力効果を見積もるための予備実験を遂行した。 高温用ダイヤモンドアンビルセル(高温DAC)は、0.3mm径のニクロム線をコイル状に巻いたものをダイヤモンドアンビルの周囲に置き、その周囲に断熱のためのマイカやパイロフィライトで覆うことで、125Wの電力の投入により試料部で10GPa、約400°Cまでの加熱が達成された。目標である500〜800°Cの達成には2段階加熱方式の採用やダイヤモンドのダメ-ジを軽減させるための対策などさらなる改良が必要であり現在進行中である。またこの高温DACを回転対陰極X線発生装置と湾曲型位置敏感X線検出器のシステムに組み込み光軸を調整する機構を設計作成し、高温高圧下でのX線回折実験可能なシステムを完成させた。 高エネルギー物理学研究所においては、ARに設置されたMAX80システムを使った。実験はエネルギー分散法によった。まず時分割でのX線回折実験の予備実験としてSiO2の石英-コ-サイト転移のカイネティクスへの圧力効果を見積もる実験を行った。実験条件は3〜6GPa、600〜900°Cである。1分間隔での時分割測定が可能で、解析の結果圧力の増加は指数関数的に反応速度を速くする傾向にあることが明らかになった。つぎに行った層状含水鉱物の脱水反応では、高圧下で1000°C以上の高温になってしまうことがわかり、これまでの高圧セル構成では実験が不可能であるた。そこでグラファイトの環状ヒーターを使うなどのセルの改良を試みた。その結果、6GPa、1300°C程度までの実験が可能になり、ブルーサイトMg(OH)2について3GPaでの脱水反応が確認できた。
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