研究概要 |
太平洋の全般にわたるさまざま場所のさまざまな種類の海洋底堆積物(遠洋性粘土,石灰質堆積物,珪藻軟泥,近海性堆積物),及び,これらが続成作用によって固結した四万十帯の頁岩などの,全希土類元素,及び,Sr,U,Th,Pb,Cs,Ta,Ba,Zr,Hf,Beの濃度を,岡山大学・固体地球研究センターのICP-MSを用いて測定した.また,同センターの表面電離型質量分析計を用いて,試料のCe・Nd同位体比を測定した.さらに,ICP-MSを用いた,海洋底堆積物中の,Na,Mg,Al,K,Ca,Sc,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,W,Mo,Sn,Sb,Cd,Tlの濃度測定法を確立した.この方法では,正確さ・再現性,どちらも10%程度で分析が可能となっている. 海洋底堆積物の微量元素濃度の測定結果から,次のようなことが明らかとなった.(1)Ceを除く希土類元素は相互に相関が高く,また,Caと相関があった.(2)海洋底堆積物にはCe異常があったりなかったりであったが,CeはRb,U,Th,Al,B,Csと相関が見られ,Mnとは無相関であった.これらのことは,Ce濃度は,粘土鉱物などの,大陸起源物質に由来し,これと,海水起源である炭酸塩が混合し,海洋底堆積物の希土類元素パターンを形作ることを意味している.さらに,Ce・Nd同位体比の測定結果と併せると,大陸起源物質(風成塵)は,海水に落ちるとすぐにCe,Ndを海水と同位体交換をすることがあきらかとなった.
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