研究概要 |
Pyrroleへのニトリルオキシドの分子内1,3-双極子付加反応を用いたpyrrolizidineアルカロイド合成のモデルとして、L-phenylalanineから5段階でその前駆体である2-(tert-butyldimethylsilyl)oxy-1-nitro-4-phenyl-3-(N-pyrrolo)butaneを合成した。合成は、L-phenylalanineを常法でエステル化したのち、2,5-dimethoxytetrahydrofuranでpyrrole環を形成し、水素化ビス(エトキシメトキシ)アルミニウムナトリウムでエステルをアルデヒドに還元して、塩基存在下でニトロアルドール反応を行った。得られた1-nitro-4-phenyl-3-(N-pyrrolo)-2-butanolは2つの可能なジアステレオマ-の混合物であったが、ヘキサン-クロロホルムから再結晶することで、容易に1つの異性体のみが得られた。最後にtert-butyldimethylsilyl trifluoromethanesulfonateをもちいて水酸基を保護して目的化合物を得た。この化合物の分子内1,3-双極子付加反応を、向山法を用いてニトリルオキシドを発生して行ったところ、目的の1,3-双極子付加体は単離することができなかったが、代わりに、付加体が系中に存在する微量の塩基によってイソオキサゾリン環の酸素がβ脱離した後、生成したオキシムが過剰のphenylisocyanateでトラップされたと考えられる2環性のピロロカルバメートを31%で得た。すなわちこの結果は、当初考えたpyrroleへの1,3-双極子付加は起こっているものの、生成した3環性化合物の立体的な歪みと、pyrrole環の再生に伴う芳香化による安定化エネルギーのため、分子内1,3-双極子付加体は速やかに開裂してしまうため、目的の分子内環化体は単離できなかったことを示唆する。すなわち、pyrroleへのニトリルオキシドの分子内1,3-双極子付加は起こっているが、環化体を安定に単離するためにはもっと立体的な歪みが少なくなる、例えば、5,5,6員環が縮環したindolizidine前駆体を系を選ぶ必要があることがわかった。
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