研究概要 |
窒素原子を含む複素環構造を有する新規多座配位子の開発と各種イオンの高感度分離分析法への適用を目標として、以下のような基礎的研究を行った。 [1]含窒素複素環を有する3種類のエチレンジアミン誘導体,N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン,N,N,N',N'-テトラキス(1-ピラゾリルメチル)エチレンジアミンおよびN,N,N',N'-テトラキス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリルメチル)エチレンジアミンを、2価遷移金属イオン分析に利用するための基礎検討を行った。遷移金属イオンとこれらの配位子は水溶液中で1:1錯体を形成することが知られているが、Cu(II)イオンと前2つの配位子との間で2:1複核錯体を形成する場合があることが確かめられ、分析化学的利用においては反応条件の精密な検討が必要となることが見いだされた。一方、ニトロベンゼンのように誘電率の高い溶媒を用いて、遷移金属イオンを2価イオン対として抽出することを検討したところ、抽出錯体は1:2または1:3の組成を有し、複素環が疎水性の制御という形で選択性に寄与していることが明らかになった。 [2]2価6座配位子であるN,N'-(2-ヒドロキシフェニルメチル)-N,N'-(2-ピリジルメチル)-エチレンジアミンおよびその誘導体の抽出試薬としての利用を検討した。8〜9配位をとる3価希土類イオンの抽出においては、1価2座配位子であるジベンゾイルメタンとの三元抽出系を利用することにより、重希土において高い選択性を実現することが可能となった。また、4〜6配位をとる第4周期2価遷移金属イオンの抽出においては、これらの配位子が金属イオンの種類に応じて1価または2価配位子として全く異なる挙動を示すことが確かめられた。さらにフェノール環への置換基導入による立体効果やフェノール性水酸基の酸性度の変化の抽出特性への影響について、詳細な検討を進めている。
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