研究概要 |
本研究は,圧縮性オイラー方程式などの双曲型偏微分方程式の有限要素解析において、衝撃波を、鋭敏かつ安定に捕えることのできる衝撃捕獲手法の開発を行うものである.本年度は,以下のように研究を行った. 1.衝撃波を含まない双曲型偏微分方程式に対する気泡関数要素の有効性について検討を行い、移流方向の情報すなわち特性曲線の方向を使うことなく、移流の大きさのみの情報で適切な上流方向の数値粘性を導入することができることが確認された。また、このような性質は特に連立の双曲型方程式である圧縮性オイラー方程式に対して有効であることが分かった。 2.基本的な1変数の双曲型偏微分方程式の気泡関数要素を用いた有限要素解析において、衝撃波の不連続性を要素毎に評価する測度とその測度を用いた人工粘性について数値実験により検討を行った。その結果、定常衝撃波の問題には、物理量の2階微分と要素代表長さの3乗に比例する人工粘性項が有効であることが分かった。一方、非定常衝撃波に対しては物理量の1階微分と要素代表長さの2乗に比例する人工粘性により、移動する衝撃波を鋭敏に捕獲することができることが示された。 3.以上のような成果をもとに、大域的な方程式の双曲性に対しては気泡関数による上流化を行い、衝撃波に対しては局所的な人工粘性を用いる圧縮性オイラー方程式に対する有限要素解析手法を開発し、数値実験により手法の妥当性について検討を行った。その結果、本手法においては、衝撃波が3〜5要素程度の幅で捕獲され、また、要素分割による数値解の依存性も少ないことが明かとなり、解析手法の有効性が確認された。
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