研究概要 |
本年度の研究では,以下に示すように,ある偏微分方程式で記述された逆問題に対してファジィ理論を応用したソルバを開発した.また,知識工学を用いて効率化が必要とされる新たな応用分野を開拓した. 1.核融合炉の設計に関連した楕円型偏微分方程式の初期値問題として表される不適切な形状設計問題に対して,ファジィ理論を応用したソルバを開発した.これは問題の物理的な性質をファジィ理論を用いてインプリメントしたものであり,以下のような特徴を持つ. (1)柔軟性がある.これによって,振動現象をユーザーの思うように抑えることができる. (2)並列処理が実現されている.これによって,速く形状設計できるようになった. (3)入力データに対して出力データが非線形である.これは,このソルバが非線形であることを示している.他の偏微分方程式系の問題に対しても,問題の性質がわかっていたら,ファジィ理論を用いることで,同様のアプローチが可能であることがわかった. 2.偏微分方程式で記述される自由境界問題に対して,時間空間のどちらに対しても任意次数で数値計算することはできなかった.それをスペクトル選点法と写像関数を用いた固定領域法を併用することで原理的には解決した.この手法に基づく数値計算を決められた精度内で実行するためには,次数や時間刻み幅の動的な制御が必要になる.そこに知識工学の応用が有効であると思われる. 3.カオスの分野でアトラクターの次元の不連続性を数値的に発見した.これは,現在実用的な範囲で一番高次の4次の公式を用いて見つけた.この興味ある現象をさらに確定的にするためには,より高次の公式を用いてかつ次数や時間刻み幅の動的な制御を行って,より高精度に数値計算する必要がある.その制御に知識工学の応用が有効であると思われる.
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