研究概要 |
本研究は,電子パッケージ内薄膜配線角部における特異電流/熱流束場の強さK_e,K_tをパラメータとして,熱応力に関連するマクロな視点ならびにエレクトロマイグレーション(以下EM)に関連するミクロな視点の双方から,配線の強度を評価する方法を確立することを目的とするものである。以下の項目の研究を実施した。 1.理論解析によるK_e,K_tの表示の導出 折れ曲がる薄膜配線の解析モデルである二次元均質等方性導電体に定常電流が流れる場合の定常電流問題ならびに定常熱伝導問題を扱った。角部近傍の電流,温度分布の漸近解を求め,K_e,K_tの表示を導出し,特異電流/熱流束場の支配パラメータを解明した。 2.原子レベルのエネルギ的な考察に基づくK_e,K_tとEMの関係付け 電子材料学の分野において提案されている,導体内を移動する電荷量,温度と金属原子流量の関係式を用い,角部を有し折れ曲がる配線を対象として数値計算によるEMのシミュレーションを行った。これにより,角部近傍に形成されるボイド体積は,入力電流密度または折れ曲がり角の増加にともない増加することを明らかにした。また、K_eならびに角部頂点の温度をその内部に含むパフメータを提案し,同パラメータと角部近傍のボイド体積の間に線形関係が存在することを明示した。 3.実験解析によるK_e,K_tとEM発生の程度の関係付け シリコン基板上に蒸着されたアルミ薄膜配線を供試材とするEM加速試験を行った。角部近傍のボイドの電子顕微鏡写真を画像解析することによりボイド体積の定量化を行ったところ,シミュレーション結果と定性的な一致をみた。 4.角部面内せん断型の特異応力場の強さとK_tとの理論的関係付けに関する検討 特異熱応力場の強さとK_tの理論的関係については、配線下面からシリコン基板への熱流の考慮を含めて,現在検討を続行中である。
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