研究概要 |
本研究では、火炎に放電を直接印加して反応を制御し、有害物質を極力発生させないクリーン燃焼法を試みた。 成果1.燃焼器および高電圧パルス発生装置の製作 本研究では、次の2種類の火炎、すなわち、(1)対向層流拡散火炎と、(2)同軸噴流拡散火炎を形成できる燃焼器を製作した。(1)の火炎を用いた場合、放電により生成する励起種、イオン、電子等が特定されやすく、高電界中における多数の並列放電化学反応について明かにすることができる。(2)の火炎を用いた場合は、(1)のような基礎的研究というよりも、むしろ工場や発電所で用いられている火炎に放電印加することを模擬した実用的試験研究であり、実際の放電応用に重点を置いたものである。 また、燃焼器の組み立てと同時に、高電圧パルス発生装置も製作した.電気的外部パラメータ(スライダック電圧、同軸ケーブルの長さ、回転式接点器のモーター回転数)の設定により、放電形式(電圧パルス高さ、電圧パルス幅、周期、周波数)が任意に可変できるため、この装置では放電化学反応を効率よく起こすことが可能である。 成果2.化学種濃度、温度分布、電位の把握と影響因子の抽出 高電圧パルス放電下における火炎構造(濃度、温度など)と無放電のそれを比較し、火炎内すす等に及ぼす高電界印加の影響を明らかにした。研究成果としては、クリーン燃焼器を開発する上で必要とされる基礎データを得ることができた。具体的に主たる結果を示すと、上記の(1)の実験により、1.すすは高電界により微細化すること、2.熱分解帯内における燃料は吸熱放電反応を起こすこと、等が明らかになった。さらに(2)を用いた実験により(直流電圧印加の場合であるが)、1.火炎形状が細くなること、2.渦生成位置が上流に移動する現象などが初めて観測された。 以上から,本手法のような制御法を用いることにより火炎内の有害物質の選択的な除去や特定のラジカルの生成といった所望の反応を起こしうる可能性が十分あることを示した。
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