研究概要 |
本研究では,まず移動通信のフェージング環境で,マルチメディア情報の効率的な伝送手法について検討を行った.ここでは,マルチメディア情報の中で特に所要伝送速度の大きい画像情報の伝送に着目して検討を行った.限られた伝送帯域でできるだけ高品質な画像伝送を行うために,まず,画像情報を適応離散コサイン変換と呼ばれる手法を用いて空間周波数成分に分解し,分解した画像情報の伝送誤りに対する影響を定量的に評価した.その結果,高域情報は,低域情報に比べて伝送誤りにたいする影響が小さいことを定量的に明らかにした.この結果に基づき,フェージング下において高品質な画像伝送を可能にするための伝送方式について,特に変復調の観点から検討を行った.まず,画像情報の伝送誤りに対する影響の大小に応じてディジタル変調信号の信号間距離を変化させる新しい符号化変調方式を提案した.提案符号化変調方式では,復号画像の信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)を評価関数とし,アニーリング法と呼ばれる非線形最適化手法を用いて,評価関数を最大にする信号点を探索した.この手法を用いて設計した符号化変調信号を用いることにより,通常のディジタル伝送に比べて復号後SNR特性を改善することができ,特に,伝送路における信号対雑音比が低い状況では,非常に大きく復号後SNRを改善することができることを明らかにした.次に,伝送画像情報をその伝送誤りに対する影響に応じて二つのクラスに分け,それぞれ異なった送信電力で伝送する階層変調方式について検討を行った.この結果,限られた帯域と送信電力の下で復号後SNRを最大化する階層符号化変調方式の各階層への送信電力比の最適値を明らかにした.さらに,同様の検討を衛星通信の降雨減衰伝搬路に適用し,降雨による瞬断率を一定に保ったまま平均復号後SNRを改善できることを明らかにした.
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