研究概要 |
符号分割多元接続(CDMA)による等時性(isochronous)伝送を実現するためには,多数の局が同時に送信状態になる輻輳時でも,一定の伝送帯域を確保する仕組み(プロトコル)が必要となる.本研究では,輻輳の程度を推定する信号処理を行い,送信データの緊急度にあわせたプライオリティを導入することにより伝送帯域を分散制御するプロトコルを,主に,理論面から検討した. (a)搬送波及び輻輳状態検出を用いたCDMAプロトコル 従来の時分割多元接続(TDMA)方式のプロトコルのうち,輻輳時の等時性に優れた搬送波検出多元接続/衝突検出(CSMA/CD)方式と同様の信号処理を用いたCDMAプロトコルを提案し,その特性を検討した。提案プロトコルは,搬送波及び輻輳状態を検出する信号処理を行うものであり,従来のこのような信号処理を行わないCDMAに比べてスループット特性が改善できることを示した. (b)回線留保による送信のプライオリティを導入したCDMAプロトコル 一定の伝送帯域を確保するために,回線留保方式と呼ばれる通信モデルをCDMAに適用した場合の伝送特性を調べた。伝送データの緊急度にあわせて送信プライオリティを制御するプロトコルであり,通信路が輻輳していなければ,低いプライオリティのデータを送信する.このため高いプライオリティのデータのisochronous伝送を実現しつつ,伝送路の空き具合に応じて,低いプライオリティのデータを送信することにより,回線利用率を向上できることを示した。今後さらに上記(a)の述べたプロトコルに回線留保によるプライオリティを導入することにより,特性改善が期待できる。 上記(a)(b)に述べたCDMAプロトコルの有用性を、ハードウェアにより今後さらに検証していく予定であり,現在,提案信号処理を含めDSP(デジタル信号処理プロセッサ)にて実現する準備を行っている。
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