本研究は、具体的な革新的橋梁構造の提案に至る過程を、マイヤール、レオンハルト、メン及びカラトラバの作品を中心とした橋梁を研究対象に取り上げ、構造設計者または構造デザイナ-という人の軌跡として、(1)研究論文等の資料を収集し、(2)コンピューターを用いて図面の三次元モデル化を行い、(3)彼らの独創的発想の源を造形を中心として理論的に整理することを目的としていた。(1)資料収集について、マイヤールに関しては、スイス工科大学に図面・設計図書等が整理保存されているため、文献を含む研究に必要な資料は揃いつつある。カラトラバに関しては、図面と文献資料を入手したのみならず、本人に直接インタヴューして造形に関わる考え方を取材した。(2)三次元モデル作成について、図面を入手することが出来た橋梁の一部をコンピューター・エイド・デザイン・プログラムにより三次元モデル化し、その結果橋梁をあらゆる角度から見ることが可能となり、造形と構造との関わりを理解することがより容易になったと言える。マイヤールの橋梁においては、ディテ-ル構造と造形が全体系と同じレベルで考慮されていることが図面から三次元モデルを作成する際に読みとることが出来た。(3)理論的整理については、レオンハルト及びメンは研究の目的に合った図面等資料の入手が困難なため引き続き調査中であり、予定していた構造設計者または構造デザイナ-を比較することが出来ていないため理論的に整理する段階に至っていない。しかしながら、逆説的であるが、独創的と位置付けられる作品に於ける「普遍性」に注目することが重要であることが本研究を通じて分かってきた。
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