ナノオーダーで異種原子層の膜厚を制御しながら、良好な界面を持つ酸化物人工格子を積上げていくには、できるだけ低温において島状成長させずに原子層(あるいは分子層)単位で2次元的に層状成長させ、それを成長中にその場観察することが必要である。我々が独自に開発したレーザーMBE法(レーザー分子線エピタキシ-)により、種々の酸化物において、室温という低温で2次元的に単結晶薄膜成長することに成功した。2次元成長は反射高速電子線回折(RHEED)の強度振動のその場観察から確認した。具体的には以下の通りである。 (1)原子レベルで超平坦なサファイア基板上(R面)でのサファイア単結晶薄膜成長において初めて明瞭なRHEED振動を観察した。しかも、室温という低温でも、酸化アルミニウムは単結晶化し、しかもRHEED振動しながら2次元的に層状成長することが明らかになった。振動周期は1分子層(約0.3nm)の成長に対応している。RHEED振動を観察しながら成膜することによって室温でも膜厚を分子層オーダーで制御できることが実証された。 (2)岩塩型のBaO薄膜において、室温という低温で分子層状毎に単結晶薄膜成長することが明らかとなった。また、酸化物高温超伝導体の一つであるNdBa2Cu3Ox薄膜の上でも、室温でBaO薄膜を単結晶薄膜成長させることに成功した。室温成膜であるために界面での相互拡散や界面層の形成は抑制され、シャープな界面が形成された。これにより、未だ実現していないトンネル型高温超伝導ジョセフソン接合(SIS型)形成において、極薄絶縁バリア層(I層)と超伝導層(S層)間でのシャープな界面形成が可能になることが期待される。
|