研究概要 |
本研究ではホットプレスと放電プラズマ発生機とを組み合わせた構造を有する放電プラズマ焼結機を用いて、従来純粋な粉末では難焼結性を示すチタン酸バリウム(BaTiO_3)や近年不揮発性メモリとして応用が期待されているチタン酸ビスマス(Bi_4Ti_3O_<12>)の焼成体を作製した。そして、合成条件と密度、配向性、結晶構造、電気的特性、誘電特性との関係を明らかにした。 (実験方法)チタン酸バリウムはBaO_2(99.9%)およびTiO_2(99.9%)粉末を、チタン酸ビスマスはBi_2O_3(99.9%)およびTiO_2(99.9%)粉末をそれぞれBaTiO_3およびBi_4Ti_3O_<12>定比組成となるように秤量、湿式混合した粉末をペレット状に成形し、仮焼、粉砕した粉末を原料とした。原料粉末を黒鉛ダイスに入れ、5×10-2Torrまで真空にし、電圧5V、電流800Aをパルス通電して焼成した。熱膨張を測定しながら焼成し、収縮が止まった時点を焼成完了とした。得られたチタン酸バリウム、チタン酸ビスマス両試料とも、密度は重量と寸法から、結晶構造は粉末X線回折法により、キュリー点の確認は熱膨張測定により確認された。電気的特性は周波数応答アナライザーを用いた複素インピーダンスにより評価した。 (実験結果)チタン酸バリウムは約1100℃,約11分で、チタン酸ビスマスは約830℃,7分で焼結が完了した。それぞれの密度はチタン酸バリウムが96.2%、チタン酸ビスマスが98.6%であった。真空にしたことにより表面から酸素の欠乏を示す試料の色の変化が見られた。よって、大気中の所定の熱処理を行った。X線回折ではいずれも無配向の単相であることがわかった。熱膨張測定の結果いずれの試料もキュリー点付近で変化が見られた。複素インピーダンスの結果においても単相を示す一つの半円が見られ、導電率のアレニウスプロットにおいても、キュリー点近傍で活性化エネルギーの変化が見られた。 (まとめ)放電プラズマ焼結機を用いることによって、高速で従来にない緻密な材料を作ることが出来ることが分かった。しかし、放電プラズマ焼結機はその反応過程でプラズマが発生するとされているが、そのプラズマの種類やプラズマの効果はまだ明らかではない。材料合成とともに、そのメカニズムの解明を更なる課題としてとり行う予定である。
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