研究概要 |
ジベンゾチオフェン(DBT)類は軽油留分中に多く含まれ、従来の水素化脱硫法では脱硫が困難であることが知らされている。本研究では、軽油と水の二相系に紫外光を照射し、有機相中のDBTを光反応させ水相中に抽出除去するプロセスについて検討した。DBTをテトラデカン(n-C_<14>H_<30>)に溶解した模擬軽油および市販軽油を用いた。水相には蒸留水またはNaOH水溶液を用いた。高圧水銀灯を試料溶液(有機相100ml・水相300ml)に挿入し、空気を吹き込みながら攪拌し光照射した。 模擬軽油を用いた場合、約10時間の光照射によりすべてのジベンゾチオフェンが有機相から除去され、DBTの硫黄分のうち80〜95%が硫酸イオンとなって水相に移動した。これに対して、市販軽油を用いた場合には、10時間の光照射による軽油中の硫黄分の除去量は10%程度にとどまった。その理由として、軽油中には芳香族成分が多く含まれることが考えられるが、このことは模擬軽油系においてもナフタレンを添加すると脱硫特性が悪くなることで確認された。ナフタレンが直接的に光反応するのではなく、光励起されたDBTからナフタレンにエネルギー移動することが原因と考えられる。一方、テトラリンやデカリンなどの芳香族性の小さいものは脱硫をあまり阻害しなかった。 DBTのメチル化誘導体である4-メチルDBTおよび4,6-ジメチルDBTは、従来の水素化脱硫法では特に脱硫が困難なことが知られているが、光脱硫法ではむしろDBTよりも除去されやすいことが明らかとなった。 模擬軽油に三重項増感剤であるベンゾフェノンを添加した場合の脱硫速度に及ぼす影響について検討した。6時間の光照射で模擬軽油中のジベンゾチオフェンのすべてが除去され、ベンゾフェノンを添加しない系に比較して初期反応速度は3倍になった。この場合にもナフタレンの添加によって脱硫速度は大きく減少し、芳香族成分の阻害効果が大きいことが示された。
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