石炭を二硫化炭素-N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)混合溶媒を用いて室温で溶媒抽出を行った。得られた抽出物から混合溶媒を順次除き、抽出物を得た。さらにその抽出物をアセトンとピリジンを用いて溶媒分別し、アセトン可溶成分、アセトン不溶-ピリジン可溶成分、ピリジン不溶成分を得て、それらをゲル膜作製の試料とした。各成分0.1gをNMP2mlと混合しろ過により不溶成分を除いた。真空乾燥器内で種々の温度でNMPを飛ばす実験を行ったところ、室温で約10時間経過後からある石炭種のピリジン可溶成分およびピリジン不溶から、均質なゲル状の膜が形成されることを確認し、本研究にて初めて石炭抽出物からの均質なゲル膜の作製に成功した。軽質なアセトン可溶成分では、重量が平衡に達した後もペースト状であり、ゲル膜は形成されなかった。ゲル膜中の溶媒重量割合は20%〜40%であり、一般に石炭化度の低い石炭ほど多くの溶媒を含有したゲル膜となった。溶媒を変えた実験では、NMPの他にジメチルホルムアミド、ジケチルアセトアミド、ピリジンで同様のゲル膜が作製できた。そのゲル膜の粘弾性を調べるために、熱機械分析を行った。クリープ測定からこのゲル膜がゴム状弾性を有する粘弾性体であることが明らかとなった。現在の膜厚は100μm〜200μmであるので、今後制作方法の探索により薄膜の作製とその構造、並びに機能について検討を進めていく。
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