研究概要 |
これまでに基質となるメタンフェタミンに対するモノクローナル抗体MA-7,-11,15の可変領域の塩基配列を決定した。また、人工酵素の活性部位を構成するヘミン(ポルフィリン)に対するモノクローナル抗体1D3および2H5に対する可変領域の塩基配列も決定した。前者についてはコンピューターを使った分子力学計算から、重鎖・軽鎖の3次元コンフォーメーションを計算し、重鎖のCDR-2(超可変領域-2)が主に、CDR-1が補助的にメタンフェタミンを認識して結合していると推定した。抗ヘミンモノクローナル抗体についても同様の手法でヘミン結合部位を推定した結果、ヘミンは重鎖CDR-2に強く結合していると思われた。実際、CDR-2ペプチド17merを合成してヘミンおよびテトラカルボキシプロトポルフィリン(TCPP)の親和性定数を蛍光消光法で求めたところ、驚くことにTCPPではCDR-2単独で本来の抗体よりも約5倍も強い親和性を示した(1995 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies発表)。これは抗体の1部分の方がむしろ完全抗体よりも抗原の種類によっては親和性が高いという非常に興味ある結果である。 そこで、研究計画に従って、このCDR-2およびMA-11抗体のCDR-2をProで連結し、立体的な制限を加えるた超分子構造体の受け皿分子-1,-2となるCDR-2連結ペプチド(35mer)を合成し、酵素活性の測定を行っているところである。基質側にMA-11と交差反応を示すアドレナリン、活性サイト側にTCPPを用いて実験条件の検討を行っているが、超分子による酸化反応の促進効果が観察されている。 このように超分子構造体を設計し、その酵素活性の発現を試みるというユニークな発想が実現に向かつて着実に一歩踏み出したと言える。
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