研究概要 |
ポアサイズの異なる種々の多孔性ガラスへのパ-フルオロスルホン酸系カオチン交換樹脂Nafionの修飾状況を質量増加や電子顕微鏡による観察等の手法を用いて調べ、その条件並びに得られた複合体のイオン交換特性を、多孔質ガラスのポア径と関連付けて調べてきた。 サンプルとしてポア径が0.19,0.28,0.33,0.49,2.0μmの多孔質ガラスを用いたところ、いずれのガラスについても、溶液Nafionへの浸漬乾燥の操作を数回繰り返すことで、Nafionの修飾が可能であることがわかった。総修飾量は、1回あたりの浸漬時間を変えてもほとんど変化しなかったが、細孔半径が小さくなるにしたがって増加し、細孔半径の逆数に対してほぼ直線的に変化することがわかった。得られた修飾ガラスの電子顕微鏡観察結果と総合した結果、Nafionが多孔質ガラスの細孔表面に修飾されていることが示された。ただ、浸漬時間を5分以下にすると、ガラスの外部表面で目詰まりが起こって修飾が困難になった。さらに、得られたNafion修飾多孔質ガラスの電気化学的特性の一つである、イオン交換特性を調べた結果、プロトンに対するアルカリ金属イオンの選択係数が、ガラスの細孔半径に強く依存し、半径が小さくなるにしたがって減少することが明らかになった。この傾向は、アルカリ金属イオンの種類を変えても変わらず、バルクNafionに対して6程度の高い選択係数を示すCs^+であっても同様の挙動を示し、1以下の選択係数は示すことがわかった。多孔質ガラス自体のイオン交換能力はほとんどなく、得られた修飾ガラスのイオン交換容量がバルクNafionのものと一致することから、細孔内でガラス表面に吸着修飾したNafionが明らかにバルクNafionと異なる特性を示すことが明らかになった。また、このような特性の変化が認められる細孔半径が、ほぼ0.5μm程度以下であることも同時に明らかにすることができ、細孔内でイオン交換膜を形成させることで、その特性を制御できる可能性が示された。なお、この研究成果は、学会誌を通じて公表すべく準備を進めている。
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