研究概要 |
本研究は、アニオンリビング重合とカチオンリビング重合とをともに用いた概念的に新しい手法に基づき、新規定序性ポリマーとしてのAB_n型共重合体(ユニットAと鎖長が規制されたBブロックとが交互に配列された共重合体)を、2-オキサゾリンとアミノ酸 N-カルボキシ無水物(NCA)のリビング的な重合を利用して合成するとともに、それらの重合反応挙動の解析を行うことを目的としている。 まず、鎖長が制御されたBブロックを形成するために、糖置換NCAの重合反応挙動を反応速度論的解析を中心に検討した。すなわち、グルコースおよびN-アセチルグルコサミン誘導体置換NCAのn-ヘキシルアミン開始剤を用いた重合が、重水素化クロロホルム中でリビング的に進行することを新たに見出した。開始反応速度定数は成長反応速度定数に対して2600倍以上大きく、特に低重合度領域での精密な重合度の規制に優れていた。このように、糖置換NCAは、高いリビング性と迅速開始反応性とを兼ね備えており、通常のアラニン、フェニルアラニン、γ-ベンジルグルタマートNCAなどと比較して、定序性ポリマーの合成に有利であることが判明した。 そこで、AB_n型共重合構造を構築する上で、最も重要な反応となるカチオン性リビング活性種とアニオン性リビング活性種とのカップリング反応について検討を加えた。つまり、ポリオキサゾリンのリビング末端であるオキサゾリニウム種とNCAのリビング重合末端との停止反応を行った(重水素化クロロホルム中で,25℃,120時間,乾燥窒素下)。その結果、新規ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)・ポリ(O-グルコース置換セリン)ブロック共重合体を45%の収率で合成することに成功した。現時点では、2-オキサゾリンと糖置換NCAの無触媒リビング共重合によるAB_n型共重合体の単離には到っていないが、反応条件を選ぶことによって合成は可能であると考えられ、今後さらなる探索を継続する。
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