研究概要 |
イネ萎縮ウイルスはファイトレオウイルスんい属するウイルスで、12本の文節2本鎖RNAをゲノムに持つ。昨年全ゲノムの構造解析が完了し(植物レオウイルスとしては最初である)、各ゲノムが4塩基の末端保存配列、逆反復配列、単一のORFから構成されることが示された。末端保存配列、逆反復配列の末端配列ドメインはゲノムセグメントの粒子への詰め込みと複製・転写に関与することが示唆されているが、明らかとなっていない。本研究では末端保存配列と相互作用するであろうウイルス蛋白質、宿主蛋白質の同定、さらにそれら蛋白質と相互作用するシス配列の同定を最終目的に、RNA合成活性を持つRDVコア粒子の再構成を試みた。 RDVのコア粒子を構成する蛋白質遺伝子全て(S1、S3、S5 S7)を昆虫(夜盗蛾)細胞、Spodoptera frugiperdaで発現させることに成功した。さらに疑似コア粒子と考えられる構造物の部分精製も行った。但し、現在までのところ、この構造物のRNA合成活性は確認されていない。今後、コア粒子様構造物の精製法、鋳型導入法等の検討を要する。 研究過程でRDV複製に関与するであろう酵素について興味深い発見をした。以下に記す。これまで、P2、P5はアウタ-レイヤー蛋白質と考えられていたが、昨年度の奨励研究Aによりマイナ-コア蛋白質をコードすることが明らかとなった。本研究によりこのP5がGTPと共有結合することが示された。P5はmRNA転写の際のキャッピング酵素、すなわちグアニル酸転移酵素あるることが示唆された。また、P5はGTPのほかにATP,UTPとの結合活性を持っていた。この活性はこれまで報告されているグアニル酸転移酵素とは大きく異なる性質である。ATP,UTP,GTPの結合サイトは同じか?、ATP,UTP結合能の生物学的意義は何か?等、今後の大きな検討課題である。
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