木本植物の樹幹および枝の組織では、傾斜刺激によってあて材と呼ばれる特殊な木材を形成する。傾斜刺激の受容は形成層あるいは木部分化帯で行われていること、あて材という最終産物を形成するには6-8時間の刺激があれば十分であることが過去の研究例で知られている。去年、傾斜刺激に対する樹幹の応答・あて材形成機構を分子生物学的に明らかにするために、傾斜後1時間目の木部分化帯からmRNAを抽出し、そのcDNAライブラリを構築した。このライブラリからサブトクテッド・プローブ/ディファレンシャルスクリーニング法によって、今回、14個のcDNAをクローニングした。さらに14個のcDNAクローンの元となったmRNAの分子サイズを決定すること、および傾斜固定によるそれぞれの発現量の変化を調べるために、0時間から24時間で7点の傾斜時間を変えた試料木からRNAを抽出し、得られたcDNAクローンのノーザンハイブリダイゼーションを行った。 その結果14クローン中、8クローンについてバンドが検出され、元のmRNAの分子サイズは、2.8kbのものが1つあった他は全て1〜2kbの間であった。傾斜刺激後の発現量の変化は以下に示す4つのパターンに別れた。1)2時間でピークを迎え、その日の内に減衰していくもの.2)半日目頃まで徐々に増加し、その日の内に減衰するもの.3)3時間目までに急激に発現量が上昇し、その後高いレベルを維持するもの.4)時間を追うに従って発現量が増加するもの、である。これらの発現パターンの違いはそれぞれのクローンの機能の違いによるものと推察される。
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