サケの鱗相画像解析による年齢査定の自動化を目的として、入力から解析までのシステムの構築とその評価を行った。また、本研究手法の応用としてニューロ・コンピューティングを用いた鱗相による系群判別の検討を行った。鱗相によるサケの鱗相の画像入力システムを35mmフィルムスキャナを用いて構築した。また、ニューラルネットシミユレータを486DX4に移植し、実行スピードの向上を図った。しかし、システムがかなり大きいため、実用的な判別のためにはさらに高速な演算速度を必要とする。 鱗相による系群判別に関しては、北太平洋を囲む4つの地域に遡上したサケ親魚から得られたデータを用いて、4地域の判別が可能であるか検討を行った。鱗の計測データのうち、系群判別に有効であるといわれている5形質を入力データとした。データセットを任意に2つに分け、一方を学習用として用い(1111個体)、他方を学習後のシステムによる判別(1110個体)に用いた。ニューラルネットは中間層一段の3層構造とし、出力層は4地域に対応して4つのニューロンを持つ。入力データをランダムに提示して、3000回の逆誤差伝搬学習を行った。出力の最大であったニューロンに対応する地域をシステムの解答とすると、学習済みデータに関しては78.8%、未学習のデータに対しては76.5%の正解率であった。この値は、線形判別関数法に比べて高いとは言えない。しかし、判別結果を詳細に検討したところ、判別が困難である2地域が存在し、そのような場合にはそれら2地域に対応した出力ニューロンのどちらにも高い出力が得られていることが明らかとなった。このような特性は、他の判別手法と組み合わせることにより、さらに精度の高い判別が可能であることを示唆するものと考えられる。
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