生体内における種々のラジカルの生成が様々な病態に関与していることが報告されている。特に心血管系をはじめ、中枢、消化管、肝臓など、多くの臓器での虚血-再潅流障害におけるラジカルの重要性が指摘されている。しかしながら、これらラジカルは非常に反応性に富み不安定であるため、その生体内での直接的な測定は困難であった。今回、我々は病態動物において、虚血-再潅流で最初に生成する重要なラジカルであるスーパーオキサイドを、試験管内および生体内において直接測定できる系の開発と、その各種病態モデルへの応用を目的とした。 試験管内においては、スーパーオキサイド選択的蛍光試薬MCLA(ルシフェリン誘導体)を用いてラジカルの量を測定する系を確立した。この系を用いて、生体内物質であり今までその作用がはっきりしなかったシスタチオニンに、スーパーオキサイドの消去作用があることを世界で初め発見した。このほかにも、胃粘膜防御剤として臨床的にも使われているスクラファートにも、ラジカル消去作用があることを確認した。 生体内においては、この方法をラジカルの関与している各種の病態モデル、今回は特に我々が確立した胃粘膜における虚血-再潅流障害モデルに応用することにより、病態におけるラジカルの生成とその役割、さらに各種のラジカル消去剤の効果についても検討を加えた。これにより、スクラルファートやシスタチオニンといった薬物が、生体内においてもラジカル消去作用をもち、その消去作用によって胃粘膜病変の生成を抑制することも明らかとした。この様に、この系を各種のラジカルが関与している病態モデルへ応用することは、各種病態の研究において非常に有用であると考えられる。
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