研究概要 |
1)ゲルゾリンの機能欠失変異体の作製および発現 ゲルゾリンのseveringに関与するG1ドメインを欠いたG2-6,G2-3およびG4-6変異体ならびにカルシウムイオンによる活性制御領域を欠失したC-del645変異体をPCRにより作製した。これらの変異体を大腸菌の系において発現し、精製した。 2)ゲルゾリンの機能欠失変異体の生化学的解析 精製したG2-6,G2-3およびG4-6各変異体においてsevering活性が消失していることをピレンでラベルした精製アクチンを用いてin vitroの系で確認した。またC-del645変異体では、その活性発現においてカルシウムイオン非依存性であることを確認した。次に、G2-6,G2-3およびG4-6各変異体が野性型ゲルゾリンのsevering活性におよぼす影響をin vitroの系で検討した。その結果、G2-6変異体がsevering活性が強く抑制することが明らかになった。さらに、そのsevering抑制活性は、カルシウムイオンを必要とした。 3)ゲルゾリンsevering能抑制変異体G2-6の細胞株への導入 in vitroの系において野性型ゲルゾリンのsevering活性を抑制するG2-6変異体cDNAをマウスのメラノーマ細胞株であるB16BL6にリポフェクション法により導入した。ハイグロマイシンBによる選択後、生存してきたクローンからゲノムDNAを抽出し、PCRによりG2-6変異体cDNAの導入を確認した。さらに、G2-6変異体cDNA導入クローンからタンパク質を抽出し、抗ゲルゾリン抗体を用いてウエスタン・ブロット法により、G2-6変異体の発現を調べたところ、G2-6変異体cDNAは導入されているにも関わらず、すべてのクローンでその発現は認められなかった。RT-PCRによりmRNAの発現を検討したところ、G2-6変異体cDNA由来のmRNAは検出不能であった。次に、in vitro transcription-translation法により解析した結果、G2-6変異体cDNAはin vitroにおいては翻訳されることが明らかになった。以上の結果から、G2-6変異体の発現は、細胞の生存に対して、何らかの抑制的な作用をおよぼすことが推測された。今後、誘導可能な発現システムを用いることでG2-6変異体の細胞運動に対する影響を検討していく予定である。
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