本研究課題について、以下のような実験を行い、得られた新知見を報告する。 1.細胞質内及び細胞膜上のMHC class II抗原/インバリアント鎖の定性分析 (1)IFN-γ非添加条件下 ヒト肺扁平上皮癌由来株3株、腺癌由来株3株、大細胞癌由来株4株、小細胞癌由来株5株からタンパクを抽出し、SDS-PAGE及びWestern blot分析を行ったところ、全ての非小細胞癌株と小細胞癌株の1株においてHLA-DRの発現が細胞質及び細胞膜上に認められた。しかしの4株の小細胞癌株にはその発現は見られなかった。一方、インバリアント鎖については、全ての非小細胞癌株と小細胞癌株の2株においてその発現が細胞質内に見られたが、小細胞癌株の3株には発現が見られなかった。 (2)IFN-γ添加条件下 IFN-γの添加により、HLA-DRの発現の見られなかった4株の小細胞癌株のうち3株にはその発現誘導が認められた。また、インバリアント鎖についてはその発現の見られなかった3株にも細胞質内への発現が誘導された。 2.細胞質内及び細胞膜上のMHC class II抗原/インバリアント鎖の定量分析 上記肺癌培養細胞株から細胞質内及び細胞膜上のMHC class II抗原/インバリアント鎖の定量分析を行ったところ、IFN-γ無添加条件下、IFN-γ添加条件下のいづれにおいても、小細胞癌株におけるMHC class II抗原/インバリアント鎖の発現量は非小細胞癌株に比較して極く微量であることが明らかとなった。 以上より、肺癌培養細胞におけるMHC class II抗原、インバリアント鎖の発現状態は、小細胞癌と非小細胞癌との間で、(1)MHC class II抗原及びインバリアント鎖誘導因子無添加状態すなわち自発的なMHC class II抗原/インバリアント鎖発現状態、(2)誘導因子添加によるMHC class II抗原/インバリアント鎖誘導性、のいづれにおいても大きな差異が認められた。また発現しているMHC class II抗原/インバリアント鎖の局在についての異常は認められなかった。
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