ヒトや動物において腎臓は、カドミウムの主要な標的臓器である。幾つかの疫学的研究によって、職業的にカドミウムに曝露されている労働者に腎結石の形成が見られることが明かにされている。一方、クエン酸は腎結石形成の阻害因子として最も重要な物質である。カドミウム曝露が関連すると思われる腎結石形成のメカニズムを明かにするために、ラット腎刷子縁膜小胞(BBMV)を分離精製しin vitro及びin vivoにおいてカドミウムを曝露しBBMVにおけるクエン酸の取り込みを調べた。In vitroの曝露は、BBMVをカドミウムに前処置後、BBMVにおけるクエン酸の取り込みを測定した。In vitroの曝露は、塩化カドミウム2mg/kg body wt/dayを17-20日間皮下注射した。カドミウム皮下注前日と14日後に代謝ケージにて24時間蓄尿した。 カドミウムの前処置により、BBMVにおけるクエン酸の取り込みは時間依存的・カドミウムの濃度依存的に阻害された。一方、カドミウム投与ラットの腎刷子縁膜はカドミウムにより傷害され、BBMVにおけるクエン酸の取り込みも障害されていた。濃度曲線により、BBMVのクエン酸に対する親和性ではなくクエン酸の最大取り込み値が原因であることが判明した。今回のカドミウム皮下注の条件では対照群と比べ血液ガス分析及び尿中クエン酸に差はなく尿中Caは上昇し、結石形成の危険性は高いと考えられたが、カドミウムに長期間・高濃度に曝露されるとクエン酸の取り込みが障害され結石形成が阻害されることが示唆された。
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