(目的)メチル水銀毒性については、中枢神経系傷害を中心に多くの研究発表が見られる。血中のメチル水銀が脳に蓄積する過程には、脳の毛細血管内皮細胞より構成される血液脳関門を通過するため、毛細血管内皮細胞にメチル水銀は何らかの影響を与えていると思われる。そこで、血液脳関門モデルである培養脳微小血管内皮細胞を用い、メチル水銀が細胞生存能にどのような影響を与えるのか検討した。 (方法)屠殺場より豚脳を入手して初代培養を実施し、脳微小血管内皮細胞(PCMEC)を採集・培養した。メチル水銀の暴露方法は24multiwell-plateにconfluentに増殖した細胞をMCDB131(serum-free)で培養し、段階的濃度のメチル水銀を24時間作用させた後、細胞数と位走差顕微鏡による形態への影響を観察した。また、亜鉛(硫酸亜鉛)の脳微小血管内皮細胞への影響についても同様の実験を実施し、メチル水銀の影響と比較検討した。 (結果)メチル水銀では10μM以上の濃度において多数の細胞がwellの底面より剥離する所見が認められた。亜鉛では30μMにおいても形態学的な変化は見られなかった。wellあたりの細胞数の変化についてみると、亜鉛では差が認められなかったが、メチル水銀では濃度依存的に減少した。以上の結果より、脳微小血管内皮細胞に対するメチル水銀の濃度依存的細胞毒性が認められた。
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