1年間にわたって某企業における精神保健相談を行い、精神的危機援助事例についてその誘発因子についての検討を行った。またストレス対処行動について社員に対して無記名・自記式の質問紙調査を行った。【結果】A.1)1年間の診察や相談件数は実人数40名、延べ103名であった。2)40名のうち精神的危機援助事例は25名で全員20歳から30歳代の一般職や係長職であった。3)25名のうち軽度の危機援助者が10名(全員女性)、重度の危機援助者12名(男性9名、女性3名、20歳代後半から30歳代)みられた。軽度危機援助者は職場内の友人関係のトラブルが誘発因子になっていた。一方、重度危機援助者は上司とのコミュニケーション不足が誘発因子となっているものが多かった。またほとんどの事例でストレスマネージメント方法が休養型・消極型となっていた。B.ストレス対処行動の質問紙調査では「仲間と騒ぐ」60%、「スポーツをする」57%が高かった。男女別ではほとんどの項目で女性が高く、特に「おしゃべり」「ショッピング」が81%と高かった。男性は「寝ている」58%「テレビゲーム」41%で女性より高かった。職位別では中間管理職は余暇や遊びに対して消極的意見が多かった。年齢層別では20歳代は発散型のストレス対処行動をとる者が多い反面、「意欲がわかない」「喫煙」の休養型をとる者も多かった。一方30歳代では食事で外出や友人とのコミュニケーションが20歳代と比べて有意に低かった。(p<0.05)ストレス対処行動の項目について因子分析を行うと、第1因子は発散型(因子寄与率10.4)、第2因子はテレビゲーム、ビデオ、週刊誌などの屋内娯楽型、第3因子は休養型対処行動が抽出された。娯楽、発散型の余暇活動や職場内での社会的支援は精神的危機状態の回避に重要な役割となっていることが示唆された。
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