研究概要 |
心筋ミトコンドリア(mt)DNAにみられる、特定領域の欠失の有無と年齢との関係を検索した。 材料:当教室の法医剖検例のうち、0歳から84歳で各年齢層に広く分布している66例の心筋組織を材料とし、定法に従いフェノール・クロロホルム法でDNAを抽出した。PCRによる心筋mtDNAの検索:ATPase6とDループ領域間の約7.4kbの欠失の存在で、1,002bpの増幅産物がえられるようにプライマーを設定した。一方、対照としてCOI領域中の1,030bpをターゲットとして総mtDNAの増幅とした。対照の増幅が認められることを前提として、欠失領域の増幅の有無によって欠失の有無を判定した。 年齢と心筋mtDNA欠失の有無について、欠失存在群が欠失非存在群に比して、年齢が有意に高かった。また、欠失の存在する最低年齢は17歳であり、欠失の非存在の最高年齢は48歳であった。 心筋mtDNAの特定領域の欠失は、年齢に依存する変化として認められると同時に特発性心筋症などの心疾患と関連して報告されている。そこで、心疾患症例が欠失の有無に影響を与えるかをみるために、心臓突然死と欠失の有無、および、心肥大/低心重量と欠失の有無について検索した。その結果、心臓突然死群と対照群との間に有意差は認められなかった。また低心重量群と正常心重量群、心肥大群と正常心重量群との間においても有意差は認められなかった。 心筋mtDNAの欠失の存在と心臓突然死や心肥大/低心重量との相関は無く、年齢に依存してその頻度が有意に増加していた。今後欠失のratioを算出し、連続量で評価することで法医実務への適用を考察していく必要がある。
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