研究概要 |
しわ,たるみなどの皮膚の老化による外観の変化は,線維芽細胞の細胞外基質代謝の変化によると考えられる。その内的要因には暦上の加齢があり,外的要因で重要な因子には紫外線があげられる。今回は,若年者(22才,女性)と老年者(76才,男性)の皮膚組織から得られた線維芽細胞をアスコルビン酸二リン酸添加により三次元培養した。若年者の細胞は3代から7代まで,老年者の細胞は3代から6代まで継代して,内的,外的要因の影響を検討した。各代とも三次元構築をとるまで2週間培養し,その後にUVA(320〜400nm)を1日おきに1週間(4回)照射(1回あたり500mJ/cm^2,1000mJ/cm^2)し,細胞層と培養上清を回収した。細胞層中の細胞数の増加をDNA量を指標として見ると,若年者,老年者の細胞とも培養2週間後では継代が少ないものほど多かった。3週間後には,それぞれの継代でDNA量はほぼ同量になっていたが,若年者の7代と老年者の6代では他の継代数の細胞より約1-2割少なかった。また老年者の継代細胞のDNA量は若年者の細胞より3割少なかった。HPLCによるムコ多糖二糖分析ではDNA量あたりの総ムコ多糖量は若年者の細胞では継代による変化はなかったが,老年者では継代数が多くなると若干減少していた。ムコ多糖の組成は若年者の細胞より老年者でデルマタン硫酸の割合が少なく,また,それぞれの細胞とも継代数が多くなるとその割合が少しずつ減少していく傾向にあった。UVA照射によるムコ多糖量とその組成の変化は今回の実験条件では認められなかった。RT-PCRによるエラスターゼのmRNAの発現では,老年者の細胞3代より6代で減少していた。若年者およびUVA照射では発現の差は認められなかった。ELISA法によるI型コラーゲン合成活性の測定では,若年者及び老年者の線維芽細胞ともUVA照射群は非照射群より合成が低下し,若年者細胞の7代と老年者細胞の6代では他の継代に比較して低下の割合が大きかった。今後さらに継代数を増やし検討を続けて行きたい。
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