研究概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)症例に観察されるt(11; 19) (q23; p13.1)の分子解析を行うことによりMDS発症に関与する新たな原因遺伝子の同定を行った。44歳の女性患者(患者1)の白血病細胞よりcDNAライブラリーを作成し、MLLプローブでスクリーニングを行い、R6, R7, R17, T7の4つの融合のcDNAクローンを得た。いずれのクローンもMLLの第7エクソンあるいは第8エクソンの後に共通の未知のシークエンスが出現した。このシークエンスはFISH法を用いた検討により19p13.1に存在することが明らかとなり、MEN (myeloid eleven-nineteen)遺伝子と命名した。クローンT7は切断点以下の1728bpのすべての翻訳領域のシークエンスを含んでおり、576個のアミノ酸をコードしていた。MENはC末端に近い領域にlysine-rich domainが存在し、広範囲の臓器(膵、腎、骨格筋、肝、肺、胎盤、脳、心)に発現が観察された。t(11; 19) (q23; p13.1)を有する白血病細胞はノーザン解析の結果約8kbのMLL/MENmRNAを発現していた。また、t(11; 19) (q23; p13.1)を有する3症例について、MLL/MENの切断点をはさむRT-PCRを行った。患者1と3においては200bpと310bpの共通の2本のバンドが検出され、患者2では310bpのバンドのみ存在した。MLLはzinc finger typeの転写因子であり、MENはlysine-rich domainを有することから、MLL/MENはキメラ型転写因子である可能性がある。MLLが染色体転座に伴いzinc finger domainを失うこと、あるいはMLL由来のシークエンスがMENの機能を修飾することにとよりMLLあるいはMENの正常の転写制御が障害されることがMDS発症の一つの機序であることが予測される。
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