研究概要 |
ラット70%部分肝温阻血再灌流モデルにおいて、阻血時間の別により0分(sham operation)、90分、180分の3群に分け、虚血とした障害肝と門脈血のバイパスに供した非障害肝の両者について肝組織中bFGFを二種の抗bFGFモノクローナル抗体を用いたsandwich enzyme immunoassay法により経時的に測定した。さらに抗bFGFモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検討を施行した。組織障害の指標として、肝機能(GOT, GPT, TB)およびH.E染色による肝の病理組織所見の検討を行った。sham operation群では、肝組織中のbFGFに有意な変化を認めず、開腹という侵襲だけでは、閉腹後の肝組織中のbFGFは変動しなかった。90分阻血では、障害肝、非障害肝ともに、再灌流後4日目、7日目にbFGFが増加する傾向を認めたものの有意は変動はなかった。組織学的には、再灌流後1日目にfocal necrosisを示した障害肝の組織増は、4日目ですでにcontrolと同様の像まで再生しており、bFGFと組織障害との間に明らかな相関は認められなかった。180分阻血では、再灌流後4日目の障害肝において正常肝、非障害肝に比して有意な肝組織中bFGFの増加が認められた。このときの肝機能の推移をみると再灌流後1日目に比して有意な改善が認められ、さらに再灌流後1日目に応範な壊死に陥った障害肝の組織像は4日目において著明な再生性変化を認め肝再生過程にあるものと考えられた。免疫組織染色による検討では、4日目の障害肝において再生肝周囲に浸潤した炎症細胞(主にマクロファージ)にbFGFの染色性が認められた。このことから、肝虚血再灌流障害後の再生修復過程にbFGFが障害肝において産生され、重要な役割をはたしている可能性が示唆された。
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