【目的】健常部と虚血部における体外循環中の脳循環および脳機能の基礎実験的究明として、一側脳虚の体外循環の確立と脳循環動態および脳機能評価としての体性感覚誘発電位(SEP)の虚血側と健常側での変化を比較検討する。 【方法】成犬を全身麻酔下(エトレン使用)に片側総頸動脈閉塞モデル、片側総頸動脈狭窄モデル、片側総頸動脈狭窄常温定常流モデルを作製し、脳灌流圧・脳血流量・SEP(虚血作製対側前肢刺激、両側側頭部導出)を測定した。 【結果】虚血側/健側の灌流圧比は、閉塞群で0.7±0.2、狭窄群で0.6±0.2、狭窄+定常流群では健側灌流圧を80mmHgにコントロールしたが0.5±0.2であった。血流量比は同様にそれぞれ0、0.5±0.2、0.6±0.3であった。SEPは虚血作製前には両側とも同様な波形パターンを呈したが、虚血作製により各群とも波形パターンが変化しないものと波形ピーク(P14・P24・N33・P45)出現までのlatencyの2〜4mSecの延長を認めるものとに分類できた。しかし波高の明かな減弱は認められなかった。また波形パターンの変化と灌流圧や血流量とには明かな関連はなかった。 【考察および今後の課題】虚血モデルとしては圧や血流量からみても適切だったと考えられる。一方SEP変化は虚血による刺激伝達遅延によるためかとも解釈できるが、同程度の虚血でも変化を示さないものもあり、SEP計測手技上の問題も否定できない。しかし本実験においては、臨床の観点からは十分な脳虚血下でもSEP変化は極めて軽微で脳機能上問題になるとは考えられず、今後は代謝因子などからみた潜在的脳虚血部評価などの展開が必要と考えられる。
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