術中摘出された脱出椎間板組織には、新生血管およびマクロファージなどの免疫担当細胞を豊富に含む肉芽組織が付随しており、これらの因子が脱出した椎間板の消退に関与すると推察されている。そこで、自己組織に対する生体側の異物反応とも解釈できるこの現象をさらに詳細に検討すべく、動物モデルを作成し脱出椎間板と周囲の硬膜外組織の関係について観察した。実験には成熟家兎25羽を用いた。静脈麻酔科に腰椎側方進入法にてL1/2椎間板を部分摘出した後、後方進入法にて腰仙椎間の椎弓を展開、手術顕微鏡下に黄色靱帯を切開してL6の硬膜外腔に摘出椎間板(以下disc)を移植した(椎間板移植群;n=20)。一方、黄色靭帯の切開のみを行ったものをコントロールとした(n=5)。移植後1、2、4、8、12週に椎間板移植群4羽とコントロール1羽を屠殺してdiskを含む脊柱管の横断面が観察できるように脱灰後パラフィン切片を作成し、HE染色とマクロファージ(Mφ)に対する免疫組織染色を行い、経時的変化を観察した。その結果、椎間板移植群では移植後早期に隣接する硬膜外樹脂から新生血管が生じて、Mφ等の炎症細胞と共に椎間板組織内に進入した後、基質の分解と線維化が生じてヘルニア塊が消退することが明瞭に観察された。コントロール群では硬膜外腔に炎症反応は認めなかった。実験結果は、硬膜外脂肪が脊柱管内の恒常性維持に関与している可能性を示唆するものであり、第10回日本整形外科学会基礎学術集会で発表された。現在は、ヘルニア消退過程が血管形成因子や免疫抑制剤などによって薬理学的にコントロール可能であるか、動物モデルを用いてさらに検討中である。
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