研究概要 |
骨腫瘍細胞株におけるMAGE遺伝子の発現をmRNAおよび蛋白レベルにて確認した。また、HLA-class 1及び-A2分子の癌細胞表面上での発現を解析し、免疫療法の有用性について検討した。骨腫瘍細胞株として、20種類の骨肉腫細胞株と1種類の軟骨肉腫細胞株を用いた。mRNAレベルの解析として先ずこれらの細胞株よりAGPC法を用いてtotal RNAを抽出し、cDNAを合成した後、特異的プライマーを用いてRT-PCR法にて増幅した。そしてPCR productを電気泳動法にて確認した。また、蛋白レベルでの解析は、MAGE-1及び-4に対するポリクロナール抗体を用いてwestern blotting法にて検討した。細胞膜表面のHLA分子の解析はそれぞれ特異的なモノクローナル抗体を用いてFACScanにて行なった。mRNAレベルにおいてMAGE-1,-2,-3,-4,-6,はそれぞれ11(52.4%)、10(47.6%)、10(47.6)、1(4.8%)、10(47.6%)種類の細胞株に発現していた。また、12種類(57.1%)の細胞株にいづれかのサブファミリーが発現していた。蛋白レベルにおいては、MAGE-1で8種類(38.1%)、MAGE-4で1種類(4.8%)に発現していた。mRNAレベルにて1種類以上のサブファミリーが発現していた12種類の細胞株においてHLA-class 1及び-A2分子の膜表面での発現を検討したところ、HLA-class1分子は、ほとんどすべての細胞株において陽性を示した。HLA-A2分子は3種類(25%)において陽性を示した。MAGE-3遺伝子はHLA-A1または-A2拘束性に発現されるが、日本人の約半数がHLA-2陽性である事と、MAGE-3遺伝子が約50%の細胞株に発現している事を考慮に入れると、本邦悪性骨腫瘍患者に対するMAGE遺伝子産物を用いた癌ワクチン療法の有陽性が示唆された。
|