F1世代までのTail flick testの結果、ED50値はddN1.04%、C57BL1.74%、F11.77%、F1'1.13%となった。親系統間に有意差がみられ、正向反射消失と比較して感受性順位が逆転している。またF1世代の値の分布にもTail flick testと正向反射消失では相違が認められた。 ddN系マウスの脊髄の頚髄、仙髄後角について免疫組織化学分析を行った結果、次のような系統差を認めた。頚髄ニューロペプチドY(ddN;46.3±4.8<C57BL;82.2±10.9)、仙髄ニューロペプチドY(ddN;31.3±7.5<C57BL;46.3±3.2)、仙髄サブスタンスP(ddN;63.3±11.9<C57BL;48.4±5.6)系統間に有意差がなかったのは、頚髄サブスタンスP、頚髄、仙髄メチオニン-エンケファリンであった。 ニューロペプチドYについては、これまでに延髄より上位中枢についての分析で皮質、視床下部、三又神経脊髄路核などに系統差をみとめているがいずれもddN<C57BLであり、今回の頚髄、仙髄後角でも同様の結果となった。サブスタンスPの染色程度は、脊髄のレベルによって分布程度に系統差の有無を示した。予備実験から痛み刺激が入力する脊髄レベルによって麻酔薬による反射反応抑制に系統差が存在することが推測されており、今後の交雑世代の検討からサブスタンスPが関与するものか否かを推測できると予想される。 ニューロペプチドY、サブスタンスPおよびメチオニン-エンケファリンは脊髄後角の痛み伝導路の神経伝達物質であり、Tail flick testによる感受性との相関をしめす可能性は高いと考えられる。今後免疫組織染色をF1世代に拡大して検討する必要がある。
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