目的:腫瘍細胞の核内に存在するNuclear Matrix Protein 22(NMP22)の尿路上皮癌における尿マーカーとしての有用性を検討した。 対象:対象は筑波大学附属病院および関連施設の患者280例と健常人ボランティア20例の計300例であり、疾患の内訳は、尿路上皮癌79例(治療後の32例を含む)、他の泌尿器癌38例(治療後の12例を含む)、良性泌尿器疾患120例、良性腎疾患43例、健常人20例である。 結果:i)健常人では全例が陰性であったが、尿路上皮癌で腫瘍が存在する47例での陽性率は80.0%であり、尿路感染症を除く良性泌尿器疾患および良性腎疾患では0から50%の陽性率であった。尿路感染症では全例が陽性となった。2)尿中NMP22値の有意な日内変動は認められなかった。3)性別、年齢、腫瘍径、多発性、腫瘍形態、異型度の尿中NMP22への影響は明らかではなかった。深達度を表在癌と浸潤癌の2群で比較すると、尿中NMP22値は表在癌に比べ浸潤癌で有意に高い値を示した。4)尿路上皮癌における尿中NMP22の感受性は80.0%、特異性は66.7%、正診率は74.6%であり、尿細胞診の感受性は40.0%、特異性は100.0%、正診率は64.2%であった。5)術前、術後の尿中NMP22を比較したところ、全例で尿中NMP22は術後に低下した。 考察・結論:1)尿中NMP22は尿路上皮癌において高い感受性を示す一方、特異性に関しては、尿路感染症で偽陽性率が高く、本検査の理容にあたっては、感染を除外あるいは考慮する必要があると考えられた。2)尿中NMP22は尿細胞診に比べて高い感受性と正診率を示し、尿路上皮癌のスクリーニングおよびサーベイランス、特に再発腫瘍の発見において有用であると思われた。
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