1.研究の成果 ヒト妊娠期において最も産生量の多いEstriol 16-glucuronide (E_3G)のA環代謝が起きるならば、生じるカテコール体は重要な抗酸化物質(アンチオキシダント)になり得ると考え、E_3GのA環代謝の有無を調べた。 1)2-Hydroxyestriol 17-sulfate (2-OH-E_3G)の合成: 我々が開発したFremy塩を用いる方法を用い、2-OH-E_3GをE_3Gから一行程で得ることができた。生成物はマッシュルームチロシナーゼを用いて別途合成した標品とHPLCのピークが一致したことでその構造を確認した。 2)妊婦尿中 2-OH-E_3GのHPLCによる測定: 2-OH-E_3Gの測定において、E_3Gをはじめとするフェノール型成分の干渉が考えられたが、用いた検出器ECDの加電圧を700mVにすることでフェノール体の影響を除くことができた。また、溶離液の組成を種々検討して各成分を良好に分離することができた。このHPLC条件で健常妊婦尿を分析した結果、予想したとおり 2-OH-E_3Gを確認することができた。しかし、その排泄量は予期したほど多くなかった。 2.研究の考察 尿中の2-OH-E_3GはE_3Gの産生量に比べて生成量がかなり少なかったが、これはE_3Gの高い極性のため、水酸化酵素の基質になりにくかったからと考えられる。E_3Gはアンチオキシダントの前駆物質としてはあまり重要ではないようである。
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